10.

Semibreve

テアトロ・シルコ、ブラガ、ポルトガル
10月28日 - 10月30日

ポルトガル北西部に位置するブラガは人口わずか15万人の街だが、少なくともSemibreveが開催されていることを考えると、かなりの数のエレクトロニックミュージック通が存在していると見られる。地元ミュージシャンたちの手によって運営される、この全3日間に渡るイベントは、あまり知られてはいないが先進的なアーティストを、そうしたアーティスト達と出会う機会がなかなかないオーディエンスたちに紹介することを目的としたヨーロッパのフェスティバルのうちの1つだ。オーガナイザーたちはビッグルームの似合うアクトでラインナップを埋めるのではなく、Andy Stott、Nidia Minaj、Tyondai Braxton、L.I.E.S.主宰のRon Morelliといった面々を築100年以上の劇場テアトロ・シルコに招聘し、啓発的なパフォーマンスが繰り広げられる週末をホストする。

RA Pick: Kaitlyn Aurelia Smithによる穏やかなライブセットを、ステージの10メートル上にあるこじんまりとしたボックス席から楽しみたい。

09.

3hd Festival

HAU、ベルリン、ドイツ
10月11日 - 10月16日

時が立つにつれ、ますます多くのフェスティバルが、パネルディスカッションやマルチメディア・アートといった音楽ではない要素をプログラムに組み込むようになってきた。しかし、それを3hdほどシームレスに実現しているフェスティバルは少ない。ベルリンを拠点とする同フェスティバルは、ヴィジュアルワークやインスタレーション、エキシビジョン、そして音楽パフォーマンスで構成される、真のハイブリッドイベントだ。例えば参加者は、アルゴリズム学者兼お茶の専門家であるTCFとのワークショップのような、ユニークなイベントに参加できる。（TCFは参加者たちとコラボレーションしトラックを制作することによって、集団的思考を促す。）3hdは、Inga Copeland、Kara-Lis Coverdale、Aïsha Deviのような独特のヴィジョンを持つアーティストを数多くフィーチャーしている。しかし全員がそうした陶酔するようなアクトというわけではなく、UNiiQU3、DJ Paypal、食品まつり a.k.a foodman等が、ダンスミュージックのモダンな面を提示する。

RA Pick: AGFによる徹底的なエレクトロニカは、絶対にもっと評価されるべきだ。

08.

roBOT

ボローニャ、イタリア
10月5日 - 10月9日

街全体を会場とする、ワークショップやレクチャー、はたまたボートパーティーなどで盛りだくさんのフェスティバルが台頭する昨今において、ボローニャのroBOTはシンプルさを維持している。今年のイベントでは、例年roBOTの中でも最もエクスペリメンタルなアクトが出演しているエンツォ王宮、あるいはダンスしたい人向けのボローニャ国際見本市会場という、2つのヴェニューのどちらに行くかについて、毎晩悩まされることになる（最高の料理があちこちで食べられるこの街で1番のペンネを見つけるのは、もっと難しそうだが）。現時点で出演者は未発表だが、我々の言葉を信じてほしい。今年のラインナップも、過去のフェスティバル同様強烈な内容になるだろう。

RA Pick: 13世紀に建てられた宮殿、エンツォ王宮は、毎年roBOTの中で最も素晴らしいアトラクションのうちの1つだ。

07.

III Points

マナ・ウィンウッド、マイアミ、アメリカ合衆国
10月7日 - 10月9日

III Pointsの運営陣は、彼らがフェスティバルを立ち上げた目的は、マイアミに対する共通認識を打破することだったと語る。「私たちのアーティストコミュニティは盛り上がっていましたが、世間はマイアミに対し、サウスビーチやモデルカルチャーのような型にはまったイメージばかりを持っていました」と、彼らはコメントしている。「私たちは“もう1つの”マイアミのホーム、そして声としてIII Pointsを作りました。」4年目を迎える今年、同フェスティバルはダウンタウンの端にある多目的スペース、マナ・ウィンウッドに、真にエクレクティックなアーティストたちを招聘する。今年のラインナップはハウス/テクノDJ（Dixon、Black Coffee、Leon Vynehall、Maya Jane Coles）と、よりパフォーマンス要素の強いライブアクト（Jessy Lanza、M83、Junior Boys、LCD Soundsystem）のバランスが上手く取られている。また、奇妙なサウンドも積極的にフィーチャーしており、Oneohtrix Point NeverとAndy Stottが、風に揺れるヤシの木を良い具合に相殺するだろう。正に、“もう1つの”マイアミである。

RA Pick: いつもはライブセットをプレイするFlying Lotusが、今回はDJを披露する。彼が最近どんなレコードを買っているのかが見物だ。

06.

Phono Festival

FAF、オーデンセ、デンマーク
10月6日 - 10月9日

デンマークのエレクトロニックミュージックシーンは首都コペンハーゲンを中心に回っているが、ここ10年間でフュン島の地元民たちは、今やデンマークの重要フェスティバルの1つへと成長した、Phonoを開催するという思い切った行動に出た。ボランティアによって運営される同イベントは、オーデンセの街を流れる運河の向こうにそびえたつFAFという建物を、音楽のペトリ皿へと変えてしまう。土曜の夜にはRaimeがライブバンドとしてパフォーマンスを披露するほか、金曜日にはSensationalとKrutonという予測不可能なペアがジョーカーとして登場。また、深夜のダンスフロアには、Trevinoやデトロイトの影の重要人物Anthony 'Shake' ShakirがDJとして出演する。

RA Pick: 日本のインダストリアルバンドGroup Aが、クラウドに衝撃を与える。

05.

Elevate Festival

ドム・イン・ベルク、グラーツ、オーストリア
10月20日 - 10月23日

世界的な政治混乱が広がるこの年、多くのフェスティバルは人々にとって、人生の複雑な現実から逃避するチャンスを与えている。しかし、オーストリアのElevateは、こうした問題に正面から立ち向かい、DJやライブアクトからなるプログラムのほか、政治的な会話も中心に据えている。つまり2016年は、FunkinEven、DVS1、Lena Willikens、Luke Vibert、Lone、そしてRegisたちのパフォーマンスを楽しむ前に、ヨーロッパにおける経済と移民問題についての濃密なディスカッションを聞くことができるのだ。これら全てのプログラムは、グラーツ中心部の山中の洞窟内に作られた巨大な空間、ドム・イン・ベルで繰り広げられる。

RA Pick: オーストリアの山の中で聴く、2人のダンサーを引き連れたDJ Earlによる猛烈なフットワーク？　もう言うことなしです。

04.

Simple Things

ブリストル、イギリス
10月22日 -10月23日

From Maximum JoyからMassive Attack、そしてダブステップとその派生ジャンルと、ブリストルは全世界で見ても最も豊かな音楽の伝統を持つ街の1つだ。ということは、Simple Thingsのようなフェスティバルがあるのも当然のこと。Death Grips、Warpaint、Powell、Metronomyといったアーティストを同時にラインナップするSimple Thingsは、この街のテイストに通づるサウンドの宝庫のようなイベントだ。そしてDJ陣も、Tim Sweeney、Nina Kraviz、dBridge、Lena Willikensと実に多彩である。これら全てが、たった1日で街の各地にある4つのヴェニューで開催される。そして明くる夜には、シンセ・サスペンスのマスターJohn Carpenterによる最高のアンコールが待っている。

RA Pick: The Teklife showcase with DJ Spinn、Traxman、Jackie Dagger、Feloneezyが集結するTeklifeのショウケースは要チェック。

03.

MUTEK.MX

メキシコシティ、メキシコ
10月19日 - 10月23日

我々が昨年公開したドキュメンタリー映像でもお伝えしたように、メキシコシティには、小さいながらも情熱溢れるエレクトロニックミュージック・ラバーのコミュニティが存在する。彼らにとってMUTEK.MXは世界のシーンへの窓口であり、地元でフェイバリットアーティストたちを見れる貴重な機会である。13回目を迎える今年のフェスティバルはそんな彼らの望みを十分に叶える内容となっており、Richie Hawtin、µ-Ziq、Holly Herndon、Powell、Jlin、Rabit、The Field、Aïsha Devi、そしてSpace Dimension Controllerといった面々がラインナップされている。しかし、世界的なスターを招聘するというのは、この全5日間のフェスティバルの目的のたった一部に過ぎない。同イベントは、メキシコ、そして南アメリカにおける次世代のDJ、プロデューサー、ヴィジュアルアーティストたちにとって、彼らが世界のトップアーティストたちと肩を並べられるのだと証明できるプラットフォームでもあるのだ。そんな中でも2016年は、AAAA、Gabriel Peralta、そしてエクアドルのデュオNicola Cruz & Fidel Eljuriに注目したい。

RA Pick: Murcofはメキシコ一押しのエレクトロニックアクトであり、エクスペリメンタルミュージックシーンで活動する最も野心的なアーティストの1人だ。

02.

Unsound

クラクフ、ポーランド
10月16日 - 10月23日

「あなたは、あなたが知っていることを明確に示す為だけにUnsoundに来るのではない」というコメントが、ポーランド拠点のフェスティバルのオフィシャルサイトに表示されている。そう、我々は「発見する為に」行くのだ。他の誰かが言うとつまらなく聞こえそうなこのセリフだが、Unsoundが言っていることは紛れもない事実だ。多くのフェスティバルがその時々の流行をラインナップに反映させる一方で、Unsoundは来年注目されそうなアーティストを示唆する。プログラムは全7日間に渡り、長年ポーランドのカルチャーハブであり続けているヴィスワ川の上流の街、クラクフの各地にある会場で繰り広げられる。そこで流れる音楽のスタイルは、野心的なまでに幅広いが、奇妙なほどまとまりがある。今年のテーマである“Dislocation（転位）”が、テクノ（Paula Temple、Dr. Rubinstein）やエクスペリメンタル（Senyawa、Emptyset）、更にはタジキスタンの伝統的な葬式音楽（Samo）の間にあるドットを繋ぐ。これほどまでにアドベンチャラスなイベントは、そうそうない。

RA Pick: 金曜夜のHotel Forumに出演する、オーストラリアのポストパンク・ヒーローSevered Headsは見逃し厳禁。

01.

Amsterdam Dance Event

アムステルダム、オランダ
10月19日 - 10月23日

アムステルダムの街は、エレクトロニックミュージックに対し敬意を持っている。オランダの首都は、ヨーロッパの中でも1番最初にナイトメイヤー（街のナイトライフの為に闘うことを専門とする人物）を擁立した街であり、自治体は24時間営業ライセンスが生み出す利益をしっかりと理解している。この健康的な状況は、少なからずAmsterdam Dance Eventのおかげで成立している。この運河の街全体で、カンファレンスと様々な音楽イベントが繰り広げられるこの毎年恒例のイベントは、我々のシーンへのへの信頼をもたらしたのだ。今年で21回目を迎えるこの業界イベントは、過去20年間本質的な楽しさを忘れずに、シリアスな雰囲気を作り上げてきた。日中は、アーティストや業界関係者たちがパネル、ディスカッション、ワークショップなどで交流する。そして夜になると、HYTEやCocoonといったビッグクルーや、ドイツの人気フェスティバルNachtdigitalのようなアンダーグラウンド集団など、世界各地の人気レーベルやプロモーターが仕掛けるイベントに、総勢1,500組ものDJやLIVEアクトが出演する。アムステルダムの街が、今年もまた爆発するだろう。

RA Pick: もちろん注目は、RADIONで開催されるRAのパーティーだ。土曜の夜に、Onur Özer、rRoxymore、Actress、map.acheといた面々を迎える。