Chapter

01

In Residence

Bassiani, Tbilisi

世界12カ所でのベスト・ダンスフロアーでの祝祭

In Residenceシリーズは、1年間を通して世界12カ所のベスト・クラブを巡りながら各地でそれぞれ1ヶ月間にわたってパーティを開催し、クラブカルチャーを讃えようという企画である。クラブという空間は、日々脈動するダンスミュージックにとっての心臓部といってよく、今年我々が巡る12カ所のクラブは各地のシーンを盛り上げ続けている重要なヴェニューである。週末が訪れるたびにクラブのドアは開き、その中ではわたしたちの愛する音楽がプレイされている。

各地のクラブへそれぞれ1ヶ月間にわたって滞在するにあたり、我々はそれに連動した特集記事を展開していく。さまざまなメディアを組み合わせながら、これらの象徴的なクラブの全貌を捉えていこうと思う。

シリーズの最終章となる今回は、近年著しい活躍を果たしている新しいクラブ、Bassianiが舞台。サッカースタジアムDiamo Arenaの地下に入っているBassianiは、現在世界的に見ても最高峰だと言われているトビリシのクラブ・シーンをリードする。その良さをまとめると、まず音が素晴らしい。そして雰囲気は最高で、ブッキングされるのは陶酔的なセットを披露する実力派のアーティストばかり（Northern Electronics、The Bunker New YorkやGieglingなどがこのクラブの人気アクト）。そして、パーティーがいつまでも続くところも良さだ。ヘッドライナーが8時間以上プレイするのも日常茶飯事である。

こんなクラブが存在するのはどの国であっても素晴らしいことだが、特にそれが、紛争やソ連崩壊後の不安定な時代を経て、未だに国家を立て直そうともがいているジョージア（グルジア）という国の首都トビリシという、ヨーロッパの主要音楽シーンから乖離した街となると、これは更に見上げたことである。この国の人々の平均月収は200ユーロ（約2万円）ほどであり、厳しすぎる薬物取締法のせいで、大した害のない薬物を少量持っていただけの若者がどんどんと投獄され続けているこの国の現状は、大抵の国ではクラブ・シーンを殺してしまうほどに過酷だが、ここではそういった状況がむしろシーンの活性化を引き起こしている。社会活動家のPaata Sabelashviliは、「ジョージアではレイヴに行くことが政治活動なんだ」と言っていた。そしてBassianiは積極的にこの信条を体現しており、薬物政策に反対し、社会の差別や偏見に対抗している。多くの人々にとって、ここはただのクラブではない。トビリシの新時代の幕開けを象徴しているのだ。

Feb 3 RA In Residence, Bassiani, Tbilisi feat. Sunil Sharpe, Acronym (live), Evigt Morker (live), Zitto, Kvanchi, Kancheli

Feb 10 RA In Residence, Bassiani, Tbilisi feat. Silent Servant, Vatican Shadow (live), Ndrx, HVL, Hamatsuki (live)

Feb 17 RA In Residence, Bassiani, Tbilisi feat. Shackleton (live), Kancheli, Rookas, Jane Fitz, Zurkin

Feb 24 RA In Residence, Bassiani, Tbilisi feat. Joey Anderson b2b DJ Qu, Kvanchi, Huerco S b2b Terekke, HVL

Chapter

02

主要情報

Bassianiの概要

01
所在地
2 Akaki Tsereteli Ave, Tbilisi, Georgia
02
クラブ設立年
2014
03
ダンスフロアーの数
2
04
キャパシティ
900
05
レジデントDJ
HVL, Kancheli, Kvanchi, Nodrex, Zitto, Zesknel, Function
06
サウンドシステム
Funktion-One and Void

Chapter

03

歴史

ダンスフロアで掴む勝利

トビリシのクラブ・シーンについてよく外国人が抱く疑問は、「なんでこんなに良いんだろう？」である。その答えは、同市の最重要クラブBassianiの創業者、Tato GetiaとZviad Gelbakhianiに言わせると、トビリシでは90年代が始まったばかりだから、であるそうだ。

「この国には、90年代が訪れなかったに等しいんだ」と、Gelbakhianiは言う。

「70年代、80年代、90年代も…」とGetiaも言う。

「でも特に90年代だね。当時内戦があったせいで、誰もクラブ遊びなんてしていなかったんだ。この国がようやく少し落ち着いたのは、2000年代後半のことだ」

ヨーロッパや北米におけるレイヴ文化の全盛期などもはや遠い過去の話だが、ロシアとトルコの間に位置する、元ソ連の構成国ジョージアは、今まさに最盛期と呼べる盛り上がりを見せている。5、6軒の素晴らしいクラブを持ち、DJやプロデューサーたちが増えつつあるトビリシのクラブ・シーンは、紛れもないムーヴメントと化しており、それはこの街の文化的変容に根ざしている。野心的なブッキングと、非の打ち所がない運営方針、そして人々の繋がりを強める社交の場としての顔も持つBassianiは、そのムーヴメントを牽引する存在だ。

GetiaとGelbakhianiのふたりは、まさかこうなるとは全く予想してなかったようだ。「21、2歳のときに、いつかこうなると言われていたら、多分笑い飛ばしていただろうね」と、現在26歳のGetiaは言った。

Bassianiが生まれたのは、偶然の重なりであった。GetiaとGelbakhianiはビジネススクール時代からの友達。ふたりが育った90年代のトビリシは内戦の直後であり、電力が不足し、犯罪率が上昇していた過酷な時代であった。Getiaはポーランドのワルシャワに留学していたときにイベント・プロモーターとして活動し、Apparatとパーティーを開催するなどの経験を得ていた。地元に戻ると、彼はGelbakhianiと共にトビリシで何かをやりたいと思うようになったが、当時はシーンの基盤が弱く、主に商業的なクラブでジョージア人のDJばかりが出演している状態であった。2013年の夏、彼らは友人の誘いでバトゥミの海沿いのクラブやカフェのイベントにアーティストをブッキングする仕事を手伝った。同年冬、彼らはMuseum Of Literatureの地下室にてイベントを主催した。100人規模のプライベート・パーティーであったが、彼らも驚くほどの大成功に終わった。

「サウンド・システムを無料で借りたんだ」と、メールで彼らは説明してくれた。「あと、Museum Of Literatureの、使用していない地下室を使わせてもらったから、レンタル料もかからなかった。部屋のセッティングをして、人を招待しただけなんだが、なんだかすごく上手くいったんだ」。そのとき彼らは、トビリシの人々は新しいクラブ体験を求めているのではないかと感じた。

そのイベントの成功の興奮が冷めやらぬまま、彼らは大晦日にパーティーを開催することにした。だがそのときすでに12月も半ばに差し掛かっており、少々無謀に見えるアイディアであった。彼らはベルリンのテクノ・アクト、I/Yと、日本人DJのYuuki Sakaiをブッキングし、「コネ」を通じて面白い会場を確保することに成功した。クラ川を見下ろすチューブ型の2塔からなる建物である。これは、もともとはトビリシの新しい音楽劇場と展示ホールになる予定の建物だったが、その後政権の交代があり、「全部政治化してしまった」のだと言う。Getiaは母親からお金を借りたが、その金は彼の母親が誰かから借りたものだった。「成功させなかったらヤバいことになる、っていう状況だった」と彼は言う。

賭けには勝った。パーティーには何千人もの客が訪れ、ジョージアのレイヴ史上最大規模だったかもしれないほど巨大なレイヴ・パーティーとなった。そして驚くことに、多くの人々がイベントの前売り券を買っていた。これは、それだけの人々がテクノに強い関心を持っていたことを意味し、この街のテクノ・シーンに深く関わる人々でさえ驚くほどであった。Stream Of Unconsciousnessとして開催されたそのパーティーは、結果的にトビリシの音楽シーンにおけるひとつの転機となった。

「音楽愛とか、クラブ・カルチャーに対する関心は以前からここにもあったと思うんだ」と、Gelbakhianiは言う。「そして、もしかしたら多くの人々が気付いていなかったのかもしれないけど、皆何かを求めていたんだ」

次の夏、GetiaとGelbakhianiは、街のはじの丘の上にできた新しい屋外クラブ、Vitamin Cubesでブッキング担当として雇われた。最初から大胆に出た彼らは、毎週末外タレを呼び始めた。ハウスやテクノはあまり好まれないと思われていた当時のジョージアでは、前代未聞のことであった。「友人たちにでさえ、イカれてるって言われたよ」と、Getia。「しかしこれが正解だったんだ。あの年僕らはXhin、Sebastian Mullaert、Nick Höppner、Ryan Elliott、Stanislav Tolkachev、Voiski、Levon Vincent、Etapp Kyle、Shifted、Rødhådらを呼んだけど、結果的に成功したんだ。きっと多くの人々がそういったイベントを求めていたんだと思う」

2014年の後半になるころ、GetiaとGelbakhianiは、トビリシの水面下で沸々と沸き立っていたシーンとリンクしたクラブを自分たちでオープンすることを考えていた。彼らの思い描いたビジョンは大胆なものだった。会場の場所、サウンド・システム、ブッキング、スタッフ、ビジュアル面や、エントランス・ポリシーなど、あらゆることに対して一切の妥協を許さないクラブ。全てにおいて理想を追及したクラブ。並外れたテクノ・クラブとしてトビリシのプログレッシヴなコミュニティのハブとなり、この街の音楽シーン、そして街全体の前進を促すような場所。そんなクラブづくりを彼らは目指した。

「クラブのアイディアの打ち合わせをしていたとき、“変化”が重要なキーワードだった」と、彼らは話す。「クラブ・カルチャーの変化だけじゃなくて、自分たちの生活の変化。自分たちの周りの人々の生活や、彼らのソーシャル・ライフも含めて。じゃなかったら意味がないと思ったんだ」

彼らは街の中心に位置するWarehouse [RIKE]というスポットを見つけ、2014年の秋から翌年の春まで、月二回イベントを主催した。イベントは成功したが、部屋の使用料が高すぎたため、彼らは別の開催地を探すことにした。そんなとき、彼らの友人やイベントの常連客のなかに、トビリシの主要サッカー・スタジアムであるDinamo Arenaで働いている人がいることがわかり、スタジアムには誰も使っていない地下室が複数あることを彼らに教えてもらった。「それで1室、使わせてもらうことになったんだ。昔、水泳プールとして使われていた空間だった」と、GetiaとGelbakhianiは言う。「最初に見たときから、これだ！って思った」。迷路のような地下の通路を進んでいくと、元プール施設だった大きな部屋に出る。その洞窟のような空間は暗いと、無限に広がる宇宙を連想させた。ここがメインのダンスフロアとなった。

Bassianiはすぐにトビリシの最もポピュラーなクラブとなり、同市のテクノ・ファンたちを魅了し、若い世代のニューカマーたちも惹きつけた。人気を博した理由は簡単だ。それまでこの街になかったものを提供することができたから、である。Forbes誌でこのクラブについて記事を書いたジャーナリスト、Alixander Bagrationiはこう語る。

「酔っ払ってたわけじゃないんだけど、カルチャーショックを受けて、感情的になってしまったよ。ジョージアでこんなハイクオリティなものが作れるとは思ってもいなかったから。音は素晴らしい。ピークの時間、暗くて、ハードで、質の高い音楽が聴ける。ダンスフロアで踊っていると、何にも邪魔されない。完全に音楽に没入できるんだ」

Bagrationiはビジネスを専門に扱うライターだが、彼に言わせるとBassianiは「ジョージアの最も成功したスタートアップ」だそうだ。彼いわく、Bassianiの成功の裏にはいくつかの英断があった。「彼らは大きな賭けに出て、それが良い結果をもたらしたんだ。例えば、彼らはブランド・スポンサーを入れることを拒んだ。ジョージアでは、何でもロゴだらけにするのが普通で、たいていのクラブはそれで台無しになる。Bassianiが例えばRed Bullとかと契約していたらきっと良い金になっていただろう。しかし、そうしていたらこの質の高さは実現しなかっただろうね」

しかし最も重要なのは、このクラブがブッキングするアーティストの志向だろう。トビリシのクラブでは未だにローカルDJのみの出演が主流だが、Bassianiは毎週、海外からゲストを招聘している。そしてエントランス・ポリシーも特徴的だ。入場するにはネット上で会員になる必要があるが、そうすることで彼らは客層をコントロールし、クラブの安全を守っている。どんな街でもこういった対策は重要だが、同性愛嫌悪や右翼的思想が氾濫するこの街で、進歩的な価値観を推進する存在であろうとするBassianiにとっては、とくに大事なことである。

ただのクラブとして見てもBassianiは十分に優れているのだが、社会活動の側面も持っているところが、このクラブを類稀な存在にしている。むしろ、世界各地のクラブが模範にするべき存在かもしれない。厳しすぎる薬物政策や、根深い同性愛嫌悪など、トビリシはいくつもの社会問題を抱えている。Bassianiはその両方に面と向かって対抗してきた。GetiaとGelbakhianiは、ジョージアの薬物取締法と戦ってきたグループ、White Noiseと以前からパートナーシップを組んでおり、ふたりはこの政治運動におけるキーパーソンになっている。そしてこのクラブでは去年の春からゲイ・パーティーHoroomを開催し、注目を集めてきた。

「最初のパーティーは、想像以上に大成功だった」とふたりは言う。「1000人くらい人が集まって、とてもユニークな雰囲気ができていた。しかも、開催するたびに面白くなってる。Bassianiでは、同性愛差別は断固反対する。最近クラブに新しくできたスペースを、イベントにちなんでHoroomと名付けたんだが、それもそういった気持ちの現れだ。同性愛嫌悪に立ち向かい、ダンスフロアで勝利を掴む。今の世代がその考えを世間へと広め、社会における同性愛の恐怖や偏見を撲滅していってくれるはずだ」

“ダンスフロアで掴む勝利”というのは、Bassianiの核に宿る信念である。クラブの名前の由来は、彼らが「ジョージア史上最も重要な勝利」と呼ぶ、13世紀に起きたバシアーニの戦いである。その時代の戦いとは随分と異なるものだが、今日もこの国ではバトルが繰り広げられており、Bassianiはその中心にいるのだ。

「ジョージアの現状は、決して平穏ではない」と、GetiaとGelbakhianiが言う。「いまでも国境の問題や、社会的不平等などに直面している。団結力がないところが、この国の一番の問題じゃないだろうか。僕らの世代は4つの戦争を経験し、経済的、そして政治的な危機がずっと続いているなか生きてきた。デモ活動もたくさんしてきたが、ようやく変化が訪れているように感じる。そういった変化が、この街のクラブ・シーンの繁栄に繋がっている。Bassianiはそういった変化を促す大きな要因だ。今日のトビリシでは、テクノは抗議、レジスタンスの音楽であり、現代の戦いでは、明るい未来を実現させる人々の声なんだ」

Chapter

04

レジデント

...写真紹介

Chapter

05

人物紹介

Giorgi Ujmajuridze

運営部長

数年前にオープンして以来、トビリシにおけるBassianiの人気は急上昇しており、もともとバーマネージャーを務め、現在は運営部長として働くGiorgi Ujmajuridzeは、その成長をしっかりと見届けてきた。「何日か前、エントランスで足止めをくらった男性客がいた」と、彼は話す。「すると彼は何時間もかけて壁に穴を開けて、クラブに入ろうとした。しかし彼が到達したのは僕らがいたスタッフルームだったんだ。彼がいることに最初は誰も気がつかなくてね。そんなことをする人間がいるとは誰も思わないし。30分くらい彼は隠れていたが、そのうち疲れたらしく白状してきた。どうしてもパーティーに参加したかったのだとさ」

こういったエピソードが、Ujmajuridzeの仕事を面白くする。「僕は自分のことをパーティーのホストだと思っていて、客もそう見てくれている」と彼は言う。「毎晩、様々な人々と出会えるということが、仕事で一番楽しいことかな」

Bassaniで働く人々がたいていそうだが、Ujmajuridzeにとってクラブ通いは偶然の産物であった。都心で育った彼の幼少期は「典型的なジョージア人の生活」だったそうだ。「楽しい想い出よりも、辛い想い出のほうが多いね」。10代のときは読書、勉強、プログレッシヴ・ロックなどに夢中なオタクっぽい少年であった（今でも音楽はプログレが一番好きだそうだ）。「会社員になることを目標にしていたんだ」と彼は言う。「しかし就職して2年経って、今まで求めていた人生は、自分が本当にしたいことではないと気がついて辞めたんだ」

23歳で無職になり、とくに明確な目標もなかった彼だが、そんなとき面白いチャンスが舞い込んできた。彼の友人であるNaja Orashviliは、GetiaとGelbakhianiと共にBassianiを立ち上げたひとりであり、彼女はクラブの立ち上げの際、クラブで働くメンバーを探していると彼に持ちかけた。「クラブとかエレクトロニック・ミュージックはそんなに興味なかったんだが、昔やってたバイトのおかげでバーの運営の知識はあった。Najaに紹介されてTato、Zviadたちと知り合い、今後の予定とかについて色々話し合った。それ以来、ずっと運営チームの一員だよ」

それから2年半経過し、最初は数人だったBassianiのスタッフは40人を超え、Ujmajuridzeは運営部長の座についていた。仕事は一向に簡単にならないと彼は言う。「クラブへの期待値が高まり、来客数が増えているからね。しかし始めたときと同じくらい毎晩ワクワクしているんだ。まだ一回もパーティーを逃したことがないし、そうしてる自分を想像できない」

パーティーの盛り上がりがピークに達すとき、たまにUjmajuridzeは自分のお気に入りのスポットにいってリラックスする。もともとプールがあった空間の入り口から遠い壁際、DJの頭上に位置するダンスフロア全体が見渡せる場所だ。ここからは、照明、音響、DJ、バーなど、Bassianiのパーティーをつくっている人々のそれぞれの働きぶりが見える。ダンスフロアで汗だくになっている人々のために、Ujmajuridzeとスタッフたちは毎回イベントづくりに真剣だが、彼らが生み出すものはそれだけではない。彼が仕事にやりがいを感じるのは、ここがただのクラブではないからだ。

「Bassianiはただパーティーを楽しむ場所じゃないんだ。最初から、それ以上のものを作り上げる意識があった」と彼は言う。「僕らが作り出したのは、安息地。誰もが自由に自分を表現して、なりたい自分になれる場所。トビリシにはそういう場所がなかった。このクラブの話題が街中に広まり、世界中から注目を集めるようになったことは、ここに来る人たちの勇気に繋がっているんだ。客たちの自由な表現は、Bassianiの歩みの一部だ。Bassianiと共に皆が歩んでいる。そして素晴らしいことに、こういった変化はクラブ内で完結してしまわないんだ。僕らはクラブ外でも、路上でも不平等に立ち向かっている。僕らがこれほど自信を持つことができているのは、これまでなかったことなんだ」

Chapter

06

サウンドシステム紹介

Funktion-One, Void Acoustics

Bassianiでプレイするのが好きなDJは多い。これは雰囲気の良さや客層による部分も大きいが、ヘッドライナーが朝の9時や10時、11時になってもつい次のレコードを探してしまうのは、BassianiにはDJにとってやりやすい環境が整っているからである。

「ここのDJブースは世界一なんじゃないかな」と、サウンド・エンジニアのGuri Gotsadzeが言う。「モニタリングはとても精確で、出音と何ら変わらない音を届ける」。だからこそ、ここでプレイするDJはまるでキャンディーショップに入った子供のように、楽しそうにレコードを選ぶわけだ。ブースにあるサウンド・システムは、大きなFunktion-One。パワフルかつキメ細かい粒立ちを実現するシステムだ。

Bassianiは当初から、音の質の良さで他のクラブと一線を画する気でいた。クラブがオープンしたころ、トビリシで世界基準のサウンドを鳴らしている店はごくわずかであった。だが今やそれは当たり前のことであり、それはこのクラブの影響もある。「あのクラブが基準になったんだ」と、去年話を聞いたローカル・プロモーターが言っていた。そしてこれは、専門家や経験のある人の手を借りることなく、Bassianiチームが自分たちで試行錯誤し、達成したことであった。Bassianiの運営陣は、全てをそうやって解決してきた。

「ジョージアにはプロのサウンド・エンジニアが本当に少ないんだ」とGotsadzeが言う。「だからどこかで見つけて連れてくるよりも、自分で学ぼうと思ったんだ」

現在のFunction-Oneのシステムは、1年半前にBlue Box Londonから購入したものだ。2016年には、彼らの新しいスペースであるHoroomで少し違うアプローチをとり、Void Acousticsによるパンチの効いたシステムを導入した。どちらも今や、Bassianiでの唯一無二の体験を実現させる重要な土台となっている。

Chapter

07

Mixes

Bassianiのサウンド

レジデントDJたちが届けるBassianiの魅力

海外のDJを毎週招聘することで、Bassianiはトビリシをヨーロッパの音楽シーンの一部にさせた。しかしクラブを象徴するサウンドがダークで深遠でアトモスフェリックなテクノになったのは、外人ヘッドライナーの影響ばかりではなく、レジデントDJたちの成したことでもある。HVL、KvanchiとKancheliは、そんなレジデントDJ陣に属する3人であり、彼らはBassianiやトビリシの他のクラブが育んでいるローカルDJやプロデューサーたちのコミュニティを代表する存在だ。彼らが手掛けたこれら3つのミックスには、彼らが多大なインスピレーションを受けているBassianiというクラブの興奮が封じ込められている。

「このミックスには、Bassianiでかけると盛り上がる曲しか入れていないんだ。最近の僕のお気に入り、クラシック、そして自分のトラックも入れてある。始めたときから、このクラブの人々は許容範囲が広いと感じていたから、それを見せるため今回選曲はなるべく幅広くしようと思った。

かれこれ3年もこの仕事を任せてくれているBassianiのチームには心から感謝しているよ。ジョージアのどの分野でも類を見ないほど、彼らは努力を惜しまず献身的だ。そして、Bassianiに来るお客さん達には、いつもシーンを支えてくれてありがとうと言いたい」

「このミックスを制作することができて光栄だ。Bassianiには初日から関わっていた。本当にユニークな場所だよ。それは地元のDJにとってだけではなくて、ゲストたちにとっても同じなんだ。今回はBassianiでプレイしたことのあるアーティストたちの曲だけでミックスを作った。新しいルームHoroomができてからまだ数ヶ月しか経ってないが、このミックスはそのフロアのソウルを体現していると思う」

「Ancient Methodsとのギグが控えていたあるとき、RAのためにミックスを作るように言われた。次の晩、そのギグの準備のためにBassianiに行って、最近手に入れた曲を聴いた。そこでこのミックスを録ったんだ。楽しんでもらえたら嬉しい」

BassianiのRAプロフィールページはこちら。In Residenceシリーズの詳細は、In Residenceページを参照。